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前回に引き続き、富ヶ谷のジェネラルストア「LOST AND FOUND」のプロジェクトリーダーであるニッコー株式会社の三谷直輝さん、ブランディングプロデュースを担当したTransit Branding Studio(以下、Transit) 甲斐政博にインタビュー。後編では「新しいショールームの形」についてや、今後目指す展望についてお話を伺います。 ※「LOST AND FOUND」とは、老舗洋食器メーカーNIKKO(以下、ニッコー)の新プロジェクトとして2021年11月富ヶ谷に誕生したジェネラルストア。ニッコーが誇る純白の洋食器シリーズから厳選されたシンプルかつミニマムな食器コレクション「REMASTERED」のプロジェクトも並行させ、プロダクト視点でブランドの再構築も図っている。(詳しくは前編へ)

今回、「LOST AND FOUND = 忘れ物保管所」というネーミングがとても象徴的だと思うのですが、これはどのようにして考案されたのでしょうか?

  • 甲斐

    実はこれに関しては紆余曲折があり、一番苦しんだかもしれないです。笑 我々もかなりの数のアイディアを提案させていただいて、いくつか候補が残りつつも、なかなか1つに決まりきらない時期が続きました。

  • 三谷

    3ヶ月位は議論していましたよね?Transitさんの予定だと、ネーミング提案ってそこまで工数を取っていなかったはずなんですが、それを大幅に超えるやり取りがあったと思います。笑

  • 甲斐

    議論していく中で、アートディレクターとして起用させていただいた平林奈緒美さんが打ち合わせの際に言ったフレーズがすごく良くて。これってまさに自分達がやろうとしてることじゃない?という。方針と言葉が結びついてからは、一気に話が広がっていきましたね。

    そもそも今回、平林さんにはデザインやアートディレクションだけではなく、コンセプト作りやプロダクトに関してもご一緒したいと相談を最初にしていました。平林さんは業界の中でもプロダクト好きとして有名なこともあり、プロジェクトの企画フェーズからご参加していだきました。実際工場にも一緒に行ってアーカイブを漁るなどもしたのですが、それがあったからこそ、この店名につながったと思います。

  • 三谷

    ニッコーとしても、食器ブランドの立ち上げは過去にありましたが、これまでの歴史にない実店舗(=ショールーム+ジェネラルストア)の立ち上げだったこともあり、そのネーミングとして様々な造語をTransitさんに考えていただいたんです。なかなか響きや意味合いが100%ピンと来るものがなかったのですが、平林さんから「忘れられてしまったものが見つかる場所」というアイディアを聞いたときに、ニッコーの今置かれている状況にぴったりだなと思いました。

    自分たちとしても、こんなにいい製品を作っているのになんでお客様に届かないんだろう、というもやもやした思いがずっとあったんです。なのでこの新しい場所が「忘れ物保管所」として、我々と同じような境遇にある世の中のメーカーさんやブランドさんと共にフューチャーされる場になれれば、関わる方々全員にメリットがあると考えました。

  • 甲斐

    そうした経緯で、ジェネラルストアにはニッコーさんと同じように昔から誠実で良いものづくりを続けながらも、あまり世に知られていない他ブランドの製品を世界中から集めています。
    そこには別の狙いもあって、手前と奥できっちりと機能を線引きさせるという、新しい構成を提案させてもらいました。手前のジェネラルストアでは他のメーカーの製品とREMASTEREDコレクション、奥のショールームではその他のニッコー製品を扱っています。そうすることで、世界中の名品たちと引けを取らないREMASTEREDの存在を際立ち、結果奥のショールームにも光が当たると考えました。

toB向けのショールームという建て付けだけでなく、toC向けのジェネラルストアを併設させるという、新しいリアルストアとしてLOST AND FOUNDをスタートさせたんですね。オープン後のお客様の反響はいかがですか?

  • 三谷

    これまでのニッコーのお客様とはまた違う客層が来てくださっている実感はあります。あとは昔からお付き合いのあるお取引先に新設のショールームを見ていただく際に、「こんな食器ありましたっけ?」「ずっとありましたよ」という会話が出てきたり。それって、食器の空間での使われ方やディスプレイの仕方など、シーンによって食器のイメージが変わるからだと思うんです。従来のショールームだとなかなかイメージしづらかった部分もあったんだと思います。

  • 甲斐

    それこそが「忘れられてしまったものが見つかる場所」というこのお店のコンセプトに沿った、新しい見え方なんだと思います。

  • 三谷

    あと嬉しいのが、実はジェネラルストアで一番売れているのはREMASTEREDコレクションなんです。それに付随して奥のショールームで販売しているニッコーの食器(※)もたくさん売れていて、LOST AND FOUND全体の売り上げとしてニッコー製品が結構な割合を占めているというのは、正直意外でした。(※奥のショールームでは、REMASTEREDシリーズ以外の、既存のニッコーの食器を購入することができます)

  • 甲斐

    最近だと作家ものの食器など土っぽいものが人気だと思うんですが、逆にこういった白い食器が新鮮だったのか、オープン前に実施したメディア内覧でも真っ白い食器自体の評価が高かったんです。結果的に、このタイミングでのローンチが良かったんだなとも感じましたね。いざオープンして、白い食器がバンバン売れていって、初月売上の上位5位くらいをREMASTEREDシリーズとニッコーの既存食器が占めていたのは、シンプルに嬉しかったです。

  • 三谷

    思えば、工場で平林さんとアーカイブ食器を漁っていた時、平林さんがREMASTEREDシリーズの候補として本当にどシンプルなものをセレクトしていった訳じゃないですか。当時は正直、「これ、本当に売れるかな」という不安な思いと「でも確かにニッコーっぽい」という確信と、半々の気持ちだったんです。確かに食器好きの玄人には響くかなとは思いつつも多少心配ではあったんですが、実際にオープンしてからお客様がREMASTEREDを選んで買ってくれている事実があって。あとは自分自身も、改めてそのシンプルさ故の使いやすさは実感して最近買い足しているんですが、お客様も実際に使ってみて初めてその使いやすさを知っていただき、ECサイトで買い足してくださる方も多いようで。それも売上に影響しているのかも知れません。

着実に増えるリピーターのお客様の数が、その質の高さを物語っていますね。最後に、今後LOST AND FOUNDに期待することを教えてください。

  • 三谷

    もともとLOST AND FOUNDのコンセプト("忘れられてしまったものが見つかる場所”)ができたときに考えていたのは、我々と同じようにセールスやブランディングで困っている企業やメーカーと共にこのコンセプトを共有して、製品開発やプロジェクトを展開していけたらいいなと。あとは “モノ” 以外でも、文化や食など、忘れられてしまっている価値や歴史って世の中にたくさんあると思うので、「LOST AND FOUND」の大きなコンセプトが軸にありながら、その周辺のモノだけではないカルチャーやストーリーを開拓し、展開していけるようなことができたらとは考えています。

  • 甲斐

    いいですね。自分は、ワークショップなどリアルなイベントを積極的に行っていきたいと思っています。先日も、地下に作ったキッチンにゲストシェフを招き、料理教室をやっていただきました。発信力のある方々をご招待して食事をしていただきながら、それをインスタグラムでライブ配信したりなど、単なるショールーム・ジェネラルストアという形ではなく、自分たちから情報を発信できるような基地として機能していってくれたらと思います。

LOST AND FOUND

LOST AND FOUND = 忘れ物保管所

LOST AND FOUNDは、「忘れられてしまった大切なものが見つかる場所」

それは、確かな技術に基づいて長い間作り続けられてきたのに、
世の中に溢れた多くのものに紛れてしまったり、今も通用するのに時代の流れに埋もれてしまった、良いものが見つかる場所です。

扱うのは、長く愛用できる日用品の数々。

私たちは必ず、実用性と美しさを兼ね備えたものを選んでいます。

使う時に心地よく感じる素材、人と自然環境を大事に考えている生産背景、そして価格にいたるまで、本当に納得できるものを提案していきます。

〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1-15-12 1階

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